第23章 〜鴛鴦の契り〜
『何それ、なんか、ムカつく』とクスッと
する家康。
『いつも、意地悪ばっかり言う
お返しです!でも、私も大好きです!
信じられないくらい、嬉しい!!!』
『じゃ、もういいよね』と家康に言われ
キョトンとする桜奈。
次の瞬間、家康はまた桜奈を
ぎゅーっと力いっぱい抱きしめた。
桜奈も、今度は
満たされた表情をしながら
思いっきり抱きしめ返す。
嬉しくて、これ以上ないくらい幸せで
こんなにも満たされた幸せな瞬間が
あることを、二人は人生で初めて知った。
人影もまばらな海辺で
抱きしめ合う二人の影は
夕日に照らされて、長く伸び
これからの二人の関係が
長く続くことを予見しているようだった。
一方、レストランの窓際で
海辺の二人を見つめている信長に
『あら、上手くまとまったみたいね』と小夏。
『そのようだな、全く、手の掛かる弟だ』
『まぁ、俺は助かったけどな。家康のおかげで
小夏に悪い虫がつかずに済んだからな。』
と光秀。
『何言ってるのよ。もとはと言えば光秀が
急にいなくなったからでしょ!』と不満気な
小夏に
『そうか?あの時のお前は、意地になって
絶対に俺を受け入れなかっただろ?
違うか?』
『そ、それは・・・ぐぬぬ・・』
図星を突かれ、言葉に詰まりながら
恨めしそうに光秀を見る小夏。
『俺が、お前の事を分からないはずが
ないだろう?何年、お前を見てきてると
思ってる。なんなら、俺が俺好みの
女に育てたといっても、過言じゃないがな。』
『小夏、お前は光秀の策にまんまと
かかったウサギだ。黙って、溺愛されてろ
こんな策士を世に放ったら、世の女が
気の毒だ・・・』ニヤッとする信長。
『だそうだ、諦めろ。お前は、一生
俺の罠の中だ』クックックと悪い顔に
なりながら、ほくそ笑む光秀。
『はっー、ほんと、罠に嵌った気分だわ。
まっ、いっか自分で嵌り込んだことは
否定できないしね』晴々とした顔で
光秀を見つめる小夏もまた、誰より
幸せな顔で微笑んでいた。