第23章 〜鴛鴦の契り〜
『怒ってません。
それより、離してもらえますか』
普段の桜奈からは想像もつかないほど
冷たい低い声で、淡々と話す。
(この感じ、寝ぼけてキスした時と
似てる、相当怒ってる・・・?)
『ごめん・・・
困らせたかったわけじゃないんだ・・・
会えてうれしかったから
ちょっと先走り過ぎた。
そうだよな。やっぱり、俺には
もう会いたくなかった?・・
だから、今日も会わないように
バイトいれて俺を避けたの?』
そう言いながら、自分の腕の中から
桜奈を解放したが、拒絶されたようで
つい、憎まれ口を叩いた。
さっきよりも重い空気になっていく
桜奈は、とうとうキレて
気持ちが爆発し、語気を強めた。
『どうして・・どうして、そんな意地悪な
言い方ばっかりするんですか?
私は、振られたんです!!
好きだって言われながら、選んでは
もらえなかったんです!!
振られた私が、会いたいなんて思ったら
困らせるし、私だって辛い!だから
必死に・・我慢・・し・・て・・
酷いよ・・・もう、いや・・』
悔しさに拍手がかかり、溢れ出す涙と
行き場のない想いで、最後は言葉に
ならなかった・・・
俯いたまま、砂浜にポタポタと
桜奈の涙の跡が増えていく。
『ああ、ほんとにごめん。
そうだよ、俺が桜奈を振ったんだよな。
桜奈より、俺は自分の罪悪感を
軽くしたい方を選んだから、彼女になって
とは言えなかった。言いたかったけど
言えなかった・・・だから、振られたって
思われたてても仕方ないよ。
でも、許してもらえるなら、俺の気持ちを
もう一回、ちゃんと言わせて・・・』
何を?と言う顔で、顔を上げた桜奈の顔は
夕日に照らされ、溢れ落ちる涙は、キラキラと
光って見え、家康は息を飲む。
美しいと思いながら、桜奈の涙を
そっと拭う家康は、穏やかな優しい笑みを
浮かべ、桜奈に気持ちを語り始めた。