第23章 〜鴛鴦の契り〜
(会いたいと、思ってくれてたの?
私も会いたかった・・でも、ダメなんだよ。
それじゃ、ダメだから会わないって
決めたのに、家康さんズルイよ・・
酷いよ、人の気も知らないで!!)
『家康さん、そんな言い方ずるいですよ。
だって、振られたのは私の方ですよ。
それなのに、私を振った家康さんの方が
なんで辛そうにするんですか・・
ズルイですよ!私がどんな気持ちで・・・
(家康さんの背中を押したか
知らないくせに、また勘違いしたくなる
ような態度はやめて・・
私にもう、かまわないで!)』
最後の言葉は、飲み込み声にはならなかった。
泣かないと決めていたのに
抱きしめられている腕を
本気で振りほどけないどころか
嬉しいと感じてしまう
節操のない自分が情けなくなる。
思わせぶりな態度を取る家康にも
それに流されてしまっている自分にも
腹が立って仕方ない。
自分が家康の幸せを願っていた
あの気持ちは、桜奈の中の
誇りであり、救いだった。
だから耐えられる。
だから我慢できる。
大切な人が幸せになる為に
私が、邪魔になるなら喜んで身をひこう
そう言い聞かせ、そう信じて
あの日、終わりにしたのに。
(なのに、なのに・・・なんで今
こんなことになってるの・・・!)
情けない自分に対し、込み上げくる
怒りで、握り拳に力が入る。
唇を強く噛み締め、ワナワナと震え
静かに涙を流す桜奈。
これまでにないほど思い空気に
包まれ、悔しそうな表情だったが
怒っているようにも感じた家康。
『桜奈?もしかして、怒ってる?』