第23章 〜鴛鴦の契り〜
『私も、あそこのパンケーキ大好きで!!
それでバイト先に選んだくらいなんです。
すごく美味しいですよね!
気持ち、わかります!!』
さっきまで、俯きがちで元気の無い
様子だったのに、スイーツの話になると
途端に、テンションが上がる桜奈。
(スイーツの話のときは、相変わらずだな)
はにかむような笑みを浮かべ、安堵する
気持ちになる家康だった。
そんな、当たり障りの無い会話を続けながら
1時間以上、車に揺られていたが
ふと窓の外を見ると
桜奈の目に飛び込んできたのは
オレンジ色に染まる空と
寄せてはかえす白波と、紺碧の海。
窓に張り付くようにして
目の前に広がる景色に感嘆する
桜奈。
『うわー!!きれい・・・』
『懐かしくない?この海・・・』
『懐かしい?・・・あっ!』
『そう、小学生のときに来たことあるよね?
思い出した?』
『小学生?・・・(あぁ、ここだったんだ)』
と納得する家康。
『先生が、しぃちゃんを助けてくれた
海ですよね?うわー、懐かしいな・・・
ここにくるの、7年ぶりです。』
と言って、ぱぁっと明るく顔になった。
それから、海を一望できるレストランの
駐車場に車を止めると
少し二人で散策してきたら?と促し
信長だけレストランに先に入っていった。
信長の勧めで夕暮れの海岸を少し
歩いてみることにした
家康と桜奈。
海水浴客は、帰った後で
人もまばらだった。
黄昏れ色に染まる空と
引いては、また寄せる波の
ザザッー、ザザッーと言う音が
辺りに響き、涼やかな海風が
二人をそっと撫でて行く。