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また、恋してくれますか。

第23章 〜鴛鴦の契り〜


ロッカーを、パタンと締めると
『はっー』と小さなため息をつく桜奈。

やっとの思いで維持している
気持ちのバランスが
まだ不安定になるのかと不安だった。
今日、会ってしまったばかりに
寂しさに耐える作業が、また振り出しに
戻ってしまう。また、きっと会いたくなる。

浮かない表情になりながら
会いたい気持ちと、会わないままでいたい
気持ちが交錯したまま
裏口から外に出た桜奈。

家康だけが待っていた。

『お疲れ様』
久々に見る家康の優しい笑みを浮かべ
労るように優しい声で桜奈を
出迎えた。

(はっー、やっぱりダメだ。辛くなる・・)
そう思うと、気持ちと一緒に
視線も下がり、俯きながらペコっとお辞儀し
『お疲れ様です』と、小さな声で答える
桜奈。

(やっぱり、元気がない。夏バテが酷い?)
そう思う家康も、決して体調は良くは
なかった。

引越しの日、桜奈が帰ってから
無気力な日々が続いていた。

桜奈の家に下宿していた時間は
まるで、夢でも見ていたんじゃないかと
思うほど、遠く感じられる。
自分の感情だけで婚約をしておきながら
他に好きな子ができて、でも婚約は
解消できない。

第三者から見たら、これほど身勝手で
不誠実でズルイやつもいない。
自分を責め、その上
桜奈と離れて、自分の半身を
削がれたような喪失感に
悩まされていた。

今すぐに身体を引き寄せ
抱きしめてしめられたら
この喪失感は少しは癒えるのだろうか。
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