第23章 〜鴛鴦の契り〜
桜奈は、この5日間
家康のことで頭がいっぱいだった。
家の中で、ふとした瞬間に
思い出す家康との日々。
何度も、『ただ今戻りましたー』と玄関が
開いて帰ってきそうな錯覚に陥りながら
玄関ドアを見つめたり、もう、家康が
上杉家で暮らしていた痕跡は
何も残ってはいないのに、いつもいつも
家康の姿を無意識に探してしまう自分に
少し疲れてもいた。
会いたくて、会いたくて
家の中で思い出の残像を
何度も繰り返し探してしまう。
でも、予期せず
いざ本人を目の前にして思い知る。
あれは、ただの残像で
あの時間は二度と戻らないのだと
言う現実に自分がいるのだと。
何ごともなかったように
前と変わらず、普通に接してくる家康に
戸惑う桜奈。
自分だけが、分かっていたはずの当然の結果を
受け止めきれないまま、前に進めてないことを
突きつけられた気分になった。
そんな自分を、振り払うように
黙々と、仕事をする桜奈。
『おーい、桜奈。ちょっと来てー』
と政宗に、呼ばれた桜奈は
『はい』
と政宗の元へ行くと
『上がる時間だよ。お疲れさん』と言われ
時刻が、4時を回っていることにやっと
気づいた。
『えっ!もう、そんな時間ですか。
早いな・・・えっと、じゃお疲れ様でした。
お先に失礼します』
そう言って、スタッフルームにもどった。
着替えながら、家康に連絡を入れると
店の裏口で待ってると返信が来た。