第23章 〜鴛鴦の契り〜
愛花が出ていってからも
一口、二口、パンケーキを食べていたが
ホォークとナイフをカチャッと置くと
食べる手が止まった。
目は物凄く食べたいのに
美味しいのに
食欲が出ない。
家康が引越してからと言うもの
元気に振る舞ってはいるけれど
桜奈の世界から、色が消えて
しまっていた。
泣かないと決め、涙こそ流さないように
踏ん張っていたが、心の中の小さな桜奈は
あの日からずっと片隅に蹲り
泣き続けている。
(どうしよう、せっかく作ってもらったのに
残すなんてできない・・・)
頑張って食べているところに政宗が
入ってきた。
『桜奈お疲れー!』
『あっ、政宗さん、お疲れ様です。
今日はラストまでの
日だったんですね。』
『そう、そう。今日は、鬼店長と
レジ締めまで一緒。
確実にこき使われんだろうな』
そう言ったが、いつもなら人の話など
お構いなく、もぐもぐと食べる桜奈が
今日はそうでもないと気づき
『えっ?どうした?大好きなパンケーキ
あんまり食べてないじゃん!』
『そうなんですよ!店長がせっかく作って
くれて、凄く美味しいのに、なんか食欲なくて
食べれなくて・・・申し訳ないなって・・・』
しゅんと落ち込む桜奈をみて
(そういや、なんか顔色悪いな・・・
少し痩せた?やつれた?)と思った政宗は
『食欲ないなら、俺が食っていい?
昼食べ損ねて、腹減っててさ。
それに、愛ちゃんが作ったやつだろ!
俺には、自分で作れとかいって
作ってくんねーんだわ。味見がてら
もらうよー!』
と桜奈の向かい側に座ると
パンケーキを食べ始めた。