第23章 〜鴛鴦の契り〜
『ふーん、気になってねぇ・・・
でも、今の桜奈ちゃんが
いつもと違うって、わかってる人
他にいるかな?』と、他のスタッフを
見回す愛花。
『えっ、明らかに無理してますよね?
今日のあいつ・・・』
『それは、幸君が桜奈ちゃんを
よく見てるからじゃない?』
『えっ、どう言うことですか?』
(あー、ここにもいた、自分の気持ちに
疎いやつが・・・)
『うん、まぁ、そう言うことだよ。』
そう言うと、ポンポンと幸紫の肩を叩き
調理場に向かう愛花。
(そう言うことって、どう言うことだよ・・
わっかんねー)
納得できないまま、また仕事に戻る幸紫。
すると、お客様が入店したことに気づいた
幸紫は『いらっしゃいませー』
と言いながら、客を出迎えると
そこには、見慣れた顔の人物が立っていた。
『えっ?叔父さん、どうした?』
『やぁ、幸。久しぶり。
へぇ、ここでバイトしてるんだねぇ
どう、頑張って働いてる?』
入ってきた瞬間に、人目を引く長身の
落ち着いたイケメンは、幸紫の母の
歳の離れた弟。
武田信玄(たけだ のぶはる)
山梨にある大きなワイナリーの
オーナー兼社長でもある。
『こっちに来てたなら、言ってくれれば
良かったのに』
『ははは、サプライズってやつだよ。
どう、ソムリエ修行の一環としての
バイトは?』
『まぁ、ぼちぼちだね。』
それから、シャキッとすると
『お席にご案内致します。
こちらへどうぞ』と真面目な顔をし
接客を、始める幸紫。
『なかなか、様になってるね』と
ニコッとしながら、席に案内される信玄。