第23章 〜鴛鴦の契り〜
家康が引越して、数日後
家康と信長が上杉家に改めて
お世話になった挨拶にやってきた。
だが桜奈は、バイト先から
連絡があり
体調を崩し休んだ人の代わりに
シフトに入って欲しいと言われ
不在だった。
桜奈は、正直助かったと
思っていたのだ。
家康の顔をみたら、平気な振りするのは
まだ無理だと思った。
こっぴどく振られたわけではない。
それどころか、好きだといってくれた。
なのに一緒にはいられない。
会えばきっと、想いは募り
また何日も悶々とすることになる。
だったら、このまま顔を合わせないで
静かに終わらせようと思っていた。
久々にバイトで顔を合わせた幸紫は
笑顔で接客はしているが
いつもより元気のない桜奈が
気になっていた。
止まることを恐れているように
ひっきりなしに動き、働く桜奈。
それでいて、動きが止まると
途端に心をどこかに置いてきたような
空虚な表情になる。
(何かあったのか・・・)
好きと言う感情ではないが
バイトに入った時から
気になる存在ではあった。
『桜奈ちゃん、休憩入ってー』
愛花が声をかけた。
『えっ?もうそんな時間ですか?
休憩なくてもいいですよ。』
『ダメダメ、私が労基に怒られちゃうでしょ。
うちは、ブラック企業じゃないんだから
あとで、パンケーキ持って行くから
急にシフトに入ってもらった
お礼の特別サービスよ?ねっ!』
とニッコリする愛花。
『パンケーキ!分かりました。
じゃ、遠慮なく頂きます』笑顔を見せる
桜奈だったが、陰りが微かに見える
その顔に、愛花も内心では心配していた。