第22章 〜ただ一人の人〜
新居に戻り、買ってきた日用品の
整理を一通り終え
『じゃ、僕らはこれで失礼するね!
家康君、ほんとに世話になったね。
ありがとう!僕も息子ができたみたいで
楽しかったよ。また、いつでも遊びに
おいで』と優しく微笑む鷹介。
『僕の方こそ、本当にお世話になりました。
引越しまで手伝ってもらって
ありがとうございます。
僕もおじさんの研究の話を
もっと聞きたかったです。
また聞かせてください!』
『あはは、嬉しいなー。研究の話を
聞きたいなんて言ってくれるのは
家康君だけだよ』
照れたように、自分の後頭部を撫でながら
嬉しそうに笑う鷹介。
(ほんとですよ、穏やかで優しくて
ちょっと天然で、研究熱心で・・
自分にはないものばかりで、尊敬してます)
そう思いながら、家康も穏やかに微笑んだ。
『じゃ、また。』
『はい。お世話になりました。』
『桜奈、パパは下に車を持ってくるから
10分くらいしたら、下においで。』
桜奈の肩をぽんと叩き
優しく微笑む鷹介。
(ちゃんと、お別れしてきなさい。)
『ありがとう、パパ』
鷹介の気持ちが流れ込んでくるように
鷹介が二人きりの時間を持たせてやろうと
気遣ってくれたのが分かった。
鷹介が出て行ったあと、暫く沈黙する二人。