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また、恋してくれますか。

第22章 〜ただ一人の人〜


『僕も賛成です。近くにお蕎麦屋さん
ありますよ』と家康。

三人は近所のお蕎麦屋さんで
昼食を済ますと、そのまま
日用品の買い出しに向かった。

ビニール袋を三人それぞれが手に持ち
前を歩く家康と桜奈。
そして、そのすぐ後ろを歩く鷹介。

他愛ない話をしながら
時おり家康の方を向いて
楽しそうに微笑む娘の表情は
自分に見せる笑みとは違って見えた。

微笑み合う二人をお似合いだと
思ってしまう鷹介の心情は
複雑だった。

家康が親友の息子で
好青年なのは、一緒に暮らして
よく分かっていた。

下宿したての頃、家康なら付き合いを
認めると冗談まじりに話たこともあった。

だが、家康の暮らしぶりを親友に
報告した際に、責任感から反対をおしきって
婚約した話を初めて聞き正直、驚いた。

同時に、とても優しい子なのだとも思った。

ゆっくり探してもらうつもりだったが
二ヶ月足らずで、早々に引越しを決めたのは
桜奈の為だったのかもしれない。

婚約の話を聞いた時には
とっくに恋に落ちていた桜奈。
本人は誤魔化せているつもりでも
家康への想いは、だだ漏れだった。

千里は、いち早く気づいて鷹介に
伝えていたが鷹介も目の前を歩く
桜奈を見れば納得の一目瞭然。

優しい子ゆえ、桜奈の気持ちに気付いて
身を引いてくれたのかも知れない。
鷹介も千里もそう考えていた。

息子のいない鷹介にとっては
息子がいたらこんな感じなのかも知れないと
家康との日々を過ごしてきた。

もっと、ワームホールについても
語りたかったし
できれば、一緒にお酒も飲んでみたかった。
家康の引越しを寂しいと思っている
鷹介の心情はやっぱり複雑だった。
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