第22章 〜ただ一人の人〜
それから、あっと言う間に日が経ち
今日は、家康の引越しの日。
家康は、トランクルームに預けていた荷物を
引越し業者に運んでもらう為に
朝早くに新居に向かうことになった。
『じゃ、おばさん、栞さん
本当にお世話になりました。
このうちに下宿できて、皆さんと暮らせて
本当に楽しかったです。
ありがとうございました』
玄関先で、千里と栞に挨拶する家康。
『いえ、いえ、こちらこそ
お世話になりました。家康君には
ほんとに色々助けてもらったわ
ありがとうね!またいつでも遊びに
きてね。待ってるから』
優しく微笑みながら別れを惜しむ千里。
『そうだね。私も11月まではいるから
また顔見せにきてよ!』
『はい。また遊びにこさせてもらいます』
『じゃ、そろそろ出発しようか』と鷹介が言うと
『はい。』
『うん。』と家康と桜奈は
それぞれ返事をした。
『気をつけてね。じゃ、家康君またね!』
千里と栞に見送られて、家康は
深々と一礼し、上杉家を後し
引越しを手伝ってもらうために
鷹介と桜奈と
一緒に新居に向かった。
元々、一人暮らしをしていたので
大きな家具さえ、トランクルームから
運んでもらえば、引越しはすぐに
完了してしまう。
上杉家に持ち込んだ荷物を
運ぶだけなら、鷹介だけで
充分な人手だった。
(とうとうこの日がきてしまったな・・)
桜奈の心の中は、寂しさで
いっぱいだったが、少しでも長く
一緒にいたくて、新居が見たいから
手伝いたいと志願したのだ。