第22章 〜ただ一人の人〜
そんな、色々があった祭りも
滞りなく、予定していた日程を終了した。
夏休みだから、桜奈も連れて行くー!
と最後まで抵抗していた謙心を佐輔が
引きずるようにしながら帰っていた。
『また、すぐに会いにいくのにねー』と
呆れる栞だったが
『まぁ、今回は仕方ないかな。
強制的な従姉妹離れの窮地に
立たされたからね。』と秀吉。
秀吉が何を言っているのか
さっぱりつかめない桜奈は
従姉妹離れと聞き栞と会えるのが
今年最後になるからかぁ・・・
そう思い込んでいた。
まさか、自分のことだとは露ほども
思ってなどおらず、キョトンとする姿に
ヤレヤレとお手上げな表情をし
栞と目で会話すると、二人でふっと
笑いあった。
家康も一貫して
(はぁ、やっぱめんどくさい人だったわー)と
少し疲れた表情を見せていた。
『秀吉君は、まだ帰れないの?』と栞。
『俺は、まだ挨拶まわりが残ってるからね』
『そうか、神社の後継者も大変だねー』
『まぁね。でも俺はここが好きだしね。
第六天魔王を祀る神社なんて、貴重だし
何より、織田信長公の血筋に生まれこれて
俺は嬉しいよ。
敬愛する織田信長公と繋がってる
感じがしてね。』
(ほんとにね。あっちの秀吉さんでも、きっと
そういうよね。でも、今まで考えたことも
無かったなー。織田信長の血脈が私を
あの時代に呼んだのかもね・・・
信長様ならできそうだわ。魔王だもんね)
『そうか、信長様好きね!
私もだよ。分かるわ』そう言って
ふふふと笑う栞は、なんだかキラキラして
見えた。
愛しい人を想い浮かべているかのように
とても、幸せそうな笑みを浮かべる栞を
綺麗だと思う秀吉だった。