第22章 〜ただ一人の人〜
栞がそんなことを思っているうちに
射的の勝負はついたようで
クマのぬいぐるみを抱えて
嬉しいそうに栞のところへ
報告にきた桜奈。
『見てー!お姉ちゃん。
とってもらったよー
はい。こっちはお姉ちゃんの分ね』
と、色違いのクマのぬいぐるみを
手渡された。
『えっ?いいの?結局どっちか
どっちをとってくれたの?』と
勝負の行方を尋ねると。
『イーブンかな。
凄いんだよ。二人で同時に
同じぬいぐるみに玉をあてたの。
そうやって、二つともゲットした。
もう息ぴったりの共同作業でびっくり!!
二人とも気が合うんだねー』と
クスクスする桜奈の後ろで
一色触発のオーラ全開で
俺のおかげ、いや俺の方がコンマ数秒
早かった!の言い合いが聞こえそうな
無言の睨み合いをしている家康と謙心。
『へぇー、気が合うんだー
そうかー、ふーん・・・』
遠い目をしながら
(あの二人のどこをどう見たら
気が合うって言うのかねぇ・・・
戦国時代まんまなんだけどなー)
と思ったが
『ありがとう!家康さん。謙心お兄ちゃん!』
と桜奈が、くるっと振り返り微笑むと
ブリザードのような冷気は、ピタッっとやみ
桜奈をみて
ほわほわした、春の陽気のように
緩んだ顔になる二人。
そして、また桜奈が栞をみて
『ね?意気投合してる!』と
言う後ろで、またブリザードか吹き荒れる。
(Σなんて、わかりやすい!!)
『・・・ハハハ、だね〜。』と
乾いた笑いしか出ない栞だった。