第22章 〜ただ一人の人〜
『あいつは?』と尋ねると
家康を指差し
『射的の景品のくまがかわいくて。
射的は、謙心お兄ちゃんが上手だから
とってもらおうかなって言ったら
絶対、自分がとってやるって
頑張ってくれてる・・・でも、当たってるのに
なかなか倒れなくて。』
『まぁな、あれは集中力がいるからな
俺くらいの技術が無いと、当てる場所にも
コツがいるし難しいんだよ。
で、桜奈は、あのくまが欲しいのか?』
『うん!欲しい!かわいいし
みんなで、縁日に来た記念に!』
『じゃ、任せとけ!』
『本当に!やったー!』
あの頃と変わらない笑顔で
おねだりされ、俄然やる気の出る謙心。
『おりゃー!!』『負けーん!』
と半目し合いながら射的で張り合う二人。
その間に立ち、二人を応援する
桜奈を眺めながら栞は
ポツリと
『ねぇ、私の妹ちゃんって
もしかして、アレ?天然小悪魔女子って
やつなのかしら?』
(なんか、あっちでも、しょっちゅう見た
光景なんだけど、既視感半端ないわ・・・)
『まぁな、桜奈はある意味
魔性の女だから・・・そして驚くほど
天然ものの無自覚だからな・・・』
と苦笑いする秀吉と
『えぇ全くの同感です。計算のない純粋さと
あの容姿ですから、落ちない男子の
方が稀かと思います。』中指でクイッと
眼鏡をあげる佐輔。
『だよねー』と、やれやれと言う顔で
納得する栞。
(もう、驚きはしないけど
秀吉君も謙ちゃんも、佐輔君も
まんまだしねー。団体様で転生してるって
ことだよねー。そして、データ引き継ぎの
ように、惹かれ合う・・・ってことかしら?)