第22章 〜ただ一人の人〜
『まぁ、まぁ、そんな堅いこと言わずに
会ってみたいだろ?あっちの噂の従兄弟達にも。
気にしなくていいよ。挨拶だけだし!』
『はぁ・・・』
(さっき見たし、会いたいってほどでも
ないんだけどな・・・)
戸惑いながら返事をしたが
『よし!そうと決まれば、行くぞ!
叔父さん、親父、俺先に行くからなー』
『ああ、失礼のないようにな』と秀吉に
良く似ている人が返事をした。
二人に会釈し、秀吉について行く家康。
『さっきの方、秀吉さんのお父さんと
もう一人の方は誰ですか?』
『ああ、じぃちゃんの弟だよ。
毎年、祭りの時の演奏は、おじさんと親父と
俺の担当。で、今日は合宿できてないけど
俺の弟が神楽笛の後継になる予定。』
『へぇ、桜奈には従兄弟が結構
いるんだ。』
『うん、男ばっかりな。栞姉ちゃんが
嫁行ってからは、どっちの従兄弟にとっても
従兄弟の中で姫は、一人。
紅一点で、しかもあな無邪気の天然っぷりだから
みんな可愛くて仕方ないのよ。
小さい頃なんかほんと、可愛くて。
謙心が溺愛すんのも分かるんだわ。』
『へぇ、そうなんですね。今でも十分に
可愛いですけどね』サラッと思ったまま
口から出た本音。
その発言がどう受け止められるか
考えもせずに自然に出た言葉だった。
そんな家康をニヤニヤしながら
見てくる秀吉。
『まぁ、確かに自分の従兄弟ながら
可愛い方だと思うよ。可愛いいか。
うん、可愛いよな。そうか、そうか。』
(まっ、頑張れよ!)
肩に手を回し、ぽんぽんと叩きながら
肩を組んでくる秀吉に
『・・・』(急に、どうした?)と
秀吉を警戒しながら、ちょっと
距離を取ろうとする家康。
すると、前方から楽しげな
話し声が聞こえきた。