第22章 〜ただ一人の人〜
昼の部の神楽舞が終わり
母屋で休憩をとっているはずの
桜奈のところに向かった家康。
『お疲れ様です』と入って行くと
部屋を出て行こうとしている
秀吉と鉢合わせた。
『おぅ!お疲れー!』と秀吉。
チラっと見た部屋の中には
桜奈の姿はなく
まだ戻っていないようだった。
よく見ると、秀吉も神主の正装の
衣装を身につけていた。
他にも、同じ衣装をつけた男性が二人ほど
休憩していた。
『あれ?秀吉さん、いつの間に正装した
んですか?』と尋ねる家康に
『あれ?言ってなかったっけ?
俺は、あれ担当だったんだよ。
さっき聞いたろ?』と秀吉が指差したのは
笙という楽器。
『えっ、じゃ演奏してたんですか?』
『そうだよ。なんだ、気づいてなかったんだ。
まぁ、桜奈に注目すると、みんな
そうなるけどな』とにッと笑う秀吉。
『へぇ、生演奏だったんだ。練習の時は
CDだったから、てっきり音楽流して
やってるのかと思いましたよ。
でも、そう言われると確かに
音に迫力があったかも。
臨場感が違いましたね。』
『だろ?まぁ、桜奈も今日は
いつになく気合いが入った舞だったけど』
『ところで、桜奈は、まだ戻って
ないんですか?』
『あ、丁度、上杉の方のじいちゃんばぁちゃん
と叔父さん達がきて、挨拶に行ったとこ。
俺も、これから顔見せに行くけど
一緒に行く?』
『えっ部外者の俺がいっても
邪魔じゃないですか?』