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また、恋してくれますか。

第22章 〜ただ一人の人〜


目の錯覚ではないかと、何度か目を
擦り、また目を凝らし、まじまじと見てみるが
陽炎のように重なって見えるその人は
桜奈とそっくりなのだが
落ち着きと気品のある美しさがあり
涼やかな視線で家康を見つめる。

その姿に目を奪われていると、突然
瞬間的に、ザッ、ザッと家康の頭に中に
浮かんでは消えていく、見たこともない映像。

無表情で儚げな表情

意志の強さを秘めた瞳

微かな微笑み

雨の中で震える肩

心配そうに自分を覗き込む顔

自分から遠ざかる後姿

微笑み合い、時にすれ違い
何度も泣かせてしまった

花のように笑う
誰よりも愛しい人。

生まれ変わっても、また恋をしてくれるかと
弱々しい声で尋ね、また必ず一目惚れする
と涙を流しながら約束を交わした人。

『なんだよ、これ・・・』

そう呟いた家康の瞳からは
ツーっと、一筋の涙が頬を伝った。

自分の中で起こりながら
自分ではない、別の自分の心のアルバムを
見せられたような気分になった。

思い当たらないし、思い出せもしないが
そこに溢れてやまない感情は
今の自分にも痛いほど分かる。

『愛している』その想いを
全身で叫んでいるように、心が打ち震える。

そして、家康は理解した。
今、頭の中に浮かぶ映像の数々が
前世の残像なのだと。

『本当に、やっと会えたんだ俺・・・
会いたかったよ桜奈。』

その言葉を口にしたのが
今の自分なのか、前世の自分なのかも
分からなかったが、愛しい気持ちだけが
溢れ、溢れた分は涙となって後から
後から止めどなく、頬を伝った。
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