第22章 〜ただ一人の人〜
(明日、頑張ろう!みんなが幸せに
なれるように、家康さんが言ったみたいに
祈りを込めて天に届けるつもりで踊ろう!)
真っ直ぐに、夜空を見つめる桜奈の
横顔は、晴れ晴れしていて
月明かりを受け、とても神秘的な
美しさを醸し出していた。
(明日はきっと今以上に綺麗に
なるんだろうな・・・でも、今日のその顔は
俺だけが知ってる・・・)
桜奈の横顔を目に焼き付けるように
見つめてしまう家康だった。
次の日の朝、ひっきりなしに人が
パタパタを行き来する中で
桜奈の準備も着々と進んでいた。
家康も秀吉に指示をもらいながら
出来ることを手伝った。
神楽舞は、今日は昼の部と夜の部があり
明日は、昼の部で桜奈の仕事は
終わる。
終わったら、二人で縁日でも回って
くればいいと栞にそう言われ
家康も密かに桜奈と出店を
回ることを楽しみしながら手伝って
いたのだ。
神楽舞が始まった。
舞台に登場してきた桜奈を
観客に混じりながら見つめる家康。
『おぉー』とどよめきが起こる。
巫女の衣装に身を包み
豪華な頭飾りと神楽鈴をもち
長い髪を後ろで束ね
綺麗に化粧された姿で
しずしずと、舞台中央に歩いてくる
桜奈に釘付けになる。
いつも見ている桜奈とは
まるで違っていた。
また、あのなんとも言えぬ高揚感と
懐かしさに、家康の胸は否応なく
高まって行く。
感無量とはこんな感覚なのかも知れない。
家康の気持ちは、そんな状態だった。