第22章 〜ただ一人の人〜
(///食べてるとこ、眺めてたなんて!
意識して、食べにくいよ!)
わざと、自虐的なことをいって
恥ずかしさを誤魔化した桜奈。
だが、今も見られているのかと思うと
意識しすぎて、せっかくのアイスの
味があまりしなくなっていた。
食べる進みが遅くなり
むむむと言う難しい顔になって行く桜奈に
気づいた家康は
(あー、見られてるって意識して
食べられないんだ、クスッ、可愛いな)
そして、意地悪な笑みを浮かべ
『どうしたの、溶けちゃうよ?』と
ニヤッとした。
(そんな見られたら、食べにくいでしょ!)
と声に出していいたかったが
家康をチラッとみて、恥ずかしそうに
恨めしそうに、ぐぬぬと言う顔をする桜奈。
(///参った、可愛いすぎるわ///
これ以上調子に乗って、揶揄うと
食べる前に、溶けるからやめとこ)
もっと、揶揄いながら桜奈の顔を
眺めていたかったが、可愛そうになり
気づかない振りをして、中庭に顔を向けた。
中庭は、よく見れば美しい庭園で
整えられた木々が、生き生きと佇んでいる。
中でも目を引いたのが、立派な紅葉の木。
家康の視線が別のものを捉えたことに
ほっとし、また食べ始めた桜奈に
『あの、紅葉の木、立派だねぇ』と
視線を外すことなく、話かけてきた。
『ああ、あの紅葉は、私が生まれた時に
おじいちゃんが植えたらしいです。』