第22章 〜ただ一人の人〜
『うん、まぁアイスはね。でも今日は
どうしても、食べたいわけじゃないから
俺の分は買ってないけど。
いいから気にせず食べなよ』
頬杖をつきながら、桜奈の
美味しそうに食べる姿を見る気満々で
そう返事を返した。
『そうなんですか?じゃ、じゃぁ、遠慮なく』
そう言って、ひとすくい口に運ぼうとしたが
頬杖をついてじっーと言う視線を送ってくる
家康の視線がどうにも気になった。
また、横目でチラッと家康を見ると
なんだかニヤニヤしている。
(な、なんだろ?ものすごーく食べにくい)
静止したまま、動かけない桜奈。
『どうしたの?早く食べないと、溶けるよ?』
(なんで食べないんだろ?)
桜奈の食べる姿を無意識で待ち構えて
いる家康は、いつものように、美味しい!と
言うのを待っていた。
一方、桜奈の方は
(もしかして、一口欲しいとか?
そうだよね!目の前で食べてたら
やっぱり、欲しくなるよね?)そう思い
家康の方を向くと
『家康さん?家康さんが買って来てくれたし
一口どうぞ!はい、あーん』とスプーンを
口元に持っていった。
『えっ?俺はいいよ!いいから食べなよ!』
思ってもいなかった桜奈の行動に
慌てて、遠慮をする家康だったが
『いいですから!私が心おきなく食べる為にも
一口食べて下さい!はい!あーん』
ジリジリと迫る桜奈の目は真剣だった。
家康に食べさせてあげたい!と言うより
義理を果たして、思う存分アイスを楽しみたい!
と言う気迫がこもり、強要に近い『あーん』は
ときめきも何もあったものではなかった。