第22章 〜ただ一人の人〜
親戚談義に花を咲かせていたが
祖父から
『桜奈!そろそろ練習再開するぞー』と
声がかかった。
『はーい』とまた練習に戻る桜奈
だったが、『そうだ!』家康のそばに行き
おねだりするように手をだすと
『家康さん、アイス奢って貰えますよね!』
と、勝ち誇った顔でにんまりする。
差し出された、桜奈の手を軽く
パシっと叩くと
『はいはい。思ってたよりは、様になってて
確かにびっくりしました。
約束通り、たっかーいアイス買ってあげます!』
と納得できない顔をして見せたが本心では
明日、また桜奈の舞を目にできると思うと
期待に胸が高鳴った。
『またまたー、素直じゃないですね!
でも、奢って貰えるくらいには
私の鈍臭いイメージは、払拭されたって
ことですよね。ねっ?』と
どうなの?どうなの?と詰め寄るように
家康を覗きこむ桜奈。
子供の様に無邪気な視線で
近づかれ、桜奈を直視できなくなった
家康は、フイっと視線を逸らし
『///まっ、まあね。思ったよりはね・・・
思ったよりは、だけどね』
(思った以上で、鳥肌が立ったなんて
口が裂けても言えないけど・・凄かったわ)
と、目元を赤くしながら答ると
よっしゃ!と言うように、小さなガッツポーズで
嬉しそうな笑みを浮かべる桜奈。
(やったー!)
『じゃ、楽しみにしてますからね!
ア・イ・ス!』そう言って、祖父の
ところへ戻って行く桜奈。
そんな二人のやりとりを見ていた秀吉は
『へぇー』と何かを感じとったように
声が漏れた。
『へぇー、だよね。まっ、姉の私から見たら
お似合いの二人なんだけど、なんか色々と
事情が複雑みたいよ。』
『事情ね、確かにある・・かも。』