第22章 〜ただ一人の人〜
そして、戸口に目を向けると
祭りの準備を手伝いに来ていた人から
一斉におーっ!と言う歓声と
拍手が沸き起こった。
気付けば、祭りの準備の手を休めた
近所の人や、神社の関係者の人達が
集まってきていて
見学の人集りができていた。
そして、前列で何故か号泣している栞。
はぁはぁと少しだけ息が上がっていた
桜奈も歓声と拍手に
満面のの笑みをみせると、観客に
深々と一礼した。
『いゃー、やっぱり桜奈ちゃんの舞は
神々しいなぁー』
『さすが、織田さんとこの孫娘だな。
毎年、楽しみにしてる甲斐があるわ
明日が、待ち遠しいなぁ』
そう口々にし、桜奈の舞を称賛した。
(織田さんの孫?)家康は、気になった。
『じゃ、桜奈。一旦休憩したら
細かな修正するぞ』祖父にそう言われて
『はーい』と言うと、栞のもとに駆け寄る
桜奈。
『お姉ちゃん、大丈夫?泣くほど感動して
くれたの?』にっこりしながら、冗談半分で
尋ね、更に家康の方を得意げにチラ見した。
涙を拭いながら、うんうんと頷き
『桜奈さんの舞を見てるみたいで
もう、嬉しくて。二度と見れないと思って
たから、嬉しくて・・・』
(ほんとに、家康にも見せてあげたかった
やっぱり、桜奈は、桜奈さんの
生まれ変わりなんだ・・・)
美しい舞が定評だった、戦国時代の桜奈。
表情からちょっとした仕草まで
生写しのように舞う桜奈の姿に
栞は、家康と同じ感覚になっていた。
二度と見ることが叶わないと思っていた
舞を踊る姿をまた目にする事ができた
そう思っていたのだ。