第22章 〜ただ一人の人〜
祖父の圧の強い視線に品定めされてるような
気分になりながら
『初めまして、徳永です。お世話になります』
としっかり挨拶すると
祖父は、ぱぁっと明るい顔になり
『き、君が、家康君か?あの徳川家康公の
血筋のお方か』と握手を求めてきた。
握手を求められ
『はい、そうです』と手を伸ばすと
がっちりと両手で握り返す祖父は
『いゃー、お会いしたかったよ!
信長公の盟友であり、信長公が為し
得なかった泰平の世を作ったお方の
血筋の方に会えるとは!!
長生きはするもんだな!』と、ブンブンと
握った手を揺らした。
てっきり、孫に近づくなとでも牽制されると
思っていた家康は、呆気にとられ
『は、はぁ。』とポカンとしていたが
桜奈が耳に顔を寄せ
『あのね、家康さん。おじいちゃんは
私と同じくらい徳川家康好きな人なんだよ。
家康さんに会えてテンション上がったみたい。』
と小声で囁き、苦笑いした。
『お父さん、徳永さん戸惑ってるわよ!
ごめんなさいね、戦国武将が大好きな
なのよね、お父さん。
どうか、気を悪くしないでね』
と、祖母も苦笑いしながら謝った。
『いえ、こちらこそご先祖様を
好きでいて頂いて、有難いです。』
『いやー、申し訳ない。千里から話だけは
聞いててな。ずっと会ってみたくて
うずうずしてたから、やっと会えて興奮して
しまったよ。すまんな。』
と、頭を撫でながら、年甲斐もなく興奮した
ことに照れる祖父だったが
その笑顔は、とても嬉しそうにみえた。