第22章 〜ただ一人の人〜
翌朝、早起きして祖父母の神社に
出発した二人。
他愛ない話はするが、微妙な気まずさで
心なしかギクシャクしていた。
祖父母の家に到着すると
祭りの準備でみんな慌ただしく
働いていたが桜奈と家康を
出迎えた桜奈の祖母。
『おばあちゃん、来たよー』
『あらあら、まぁまぁ、いらっしゃい
桜奈ちゃん。ごめんね、バイトで
忙しいのに、朝早くから来てもらって
ありがとうね。
今年も宜しくお願いね!』
にっこりと微笑む祖母の笑顔は
千里にも桜奈にも面影が重なる。
家康に気づいた祖母は
『そちらが、徳永さん?』
『初めまして、徳永です。桜奈さんの
うちでお世話になってます。すみません
お忙しいところにお邪魔してしまって。
僕にできることがあれば、お手伝い
させて下さい』と礼儀正しく、頭を下げた。
『まぁご丁寧にどうも。
こちらこそ、お忙しいのに
来て頂いてありがとうございます。
何のお構いもできないですが
よかったらお祭りを楽しんで行って
下さいね!』
『はい、ありがとうございます』
挨拶しているところに、少し離れた場所から
『おーい、千草。あれ、あれはどこだったかな』
と、祖父が声をかけてきた。
『お父さん、桜奈ちゃん来たわよ』
『おじいちゃん、来たよー』とにっこり
しながら、手を振る桜奈。
『おぉ、桜奈きたか!いらっしゃい。』
目に入れても痛くないほど、可愛い孫が
きたと言う表情で、顔が緩む祖父。
そして、桜奈の隣に立つ家康をみて
途端に険しい顔になった。