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また、恋してくれますか。

第22章 〜ただ一人の人〜


横を向いたまま、すっかり冷めてしまった
タオを強く握り締めていることに
気づいた家康。

『桜奈?』と顔を覗き込むと
顔を、みられまいと俯きタオルで隠した。

そうなって初めて、自分が軽率な行動を
とったことを自覚した家康。

(あぁ、まずい。拒否しないのをいいことに
調子にのってしまった・・かなり怒ってるわ)

『その・・揶揄ってごめんな。
俺、嬉しくて、ちょっと浮かれてたわ。
ほんと、ごめん・・・』
頭に触れようとして、手を伸ばしかけたが
頑なになった桜奈に拒絶されそうで
結局、触れることをやめた。

桜奈の気持ちを改めて考え
同時に、自分が保険の役割を
降りていない立場を再認識した。

(そうだった、俺はまだ手を伸ばす
資格なんてなかったんだった・・・
バカだな、やってしまった・・・)

ほんの数分前の幸せな気持ちから一転し
後悔とともに、また、拘りの鎧を着ている
身だと自覚した家康。
今程その鎧の重みが心に重くのしかかる
気分になったことはなかった。

俯きタオルを目に当てたままの桜奈は
何も答えなかった。

『そうだ、お風呂沸いてるから
ゆっくり入って、今日は休んだ方がいいね。
明日、早いもんね・・じゃ・・俺行くね。
ごめんね・・・』

そう言って、肩を落とし桜奈の部屋を
後にした。

パタンとドアが締まり、やっと顔を上げた桜奈。

(はっー、嫌な態度を取ってしまった・・・
私だって、嬉しかったのに・・・
でも、どうせ一緒には、いられないんだもん。
望みがないのに、優しくなんてしないで
欲しかった・・・)
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