第22章 〜ただ一人の人〜
桜奈は、自分から家康を
引き剥がし
『ま、また、揶揄ってたんですねー!』
今度は、怒りで顔を赤くし、恨めしそうな顔で
怒っていた。
『ははっ、なんか、ついね・・・』と
降参のポーズで苦笑いする家康。
(あっ、マジ切れしてる?やばいかも・・)
『もう、知りません。そう言う意地悪な
家康さんは、ほんと嫌い』とプイッと
横を向く桜奈。
(人の気も知らないで!
結局は、小夏さんの幸せを優先するんでしょ。
それなのに、好きだなんて・・ズルいよ!)
想いが通じたのも束の間、家康は
桜奈と付き合いたいとも
一緒にいたいとも一言も口にはしていない。
家康には、光秀が小夏を想っていることへの
確信があった。光秀と小夏が上手く行けば
もしかしたら、自分も桜奈と付き合える
かも知れないと淡い期待を抱いていた。
桜奈と想いが通じ
自分の幸せを願ってくれる桜奈への
愛おしさと嬉しさで、告白された桜奈の
気持ちをすっかり失念していた。
一方、そんな事情を知らない桜奈に
とっては、好きだと言われながら
けれど一緒には居られないということに
何も変わりはなかった。
いや、むしろ好きだと言われた分
それなのに一緒にはいられないと言う
歯痒さだけがましていく。
結局、告白されても、されなくても
この先、自分の願う関係にはならないのだと
再認識しただけになった桜奈。
横をむいたまま
(バカだなぁ、私と一緒にいることが
幸せなんて、真に受けちゃって・・・
揶揄われただけなのに・・・関係がかわる
わけでも、私を選んでくれるわけでも
ないのに・・・期待なんてしちゃ
ダメなんだよ、桜奈!!
しっかりしろ!)
そう思うと、ジワッとまた目頭が
熱くなってきた。