第22章 〜ただ一人の人〜
眠る自分の頭を誰かに、優しく撫でらた
気がした。微睡の中で、また誰かが
自分を呼ぶ。
『桜奈、どこにも行くな・・
俺を一人にするな・・・
ずっと側にいてくれるって
約束しただろう・・・桜奈』
(あぁ懐かしい・・・安心する。
ん?でもこの人は誰?
ああ、そうだった。
私のただ一人の愛しい人だ・・
悲しそう・・私のせい?
そっか、私はもうすぐお別れしなきゃ
ならないのか・・
ずっとお側にいたいのに・・・
貴方様のもとを去らねばならない
私をお許し下さい。
どうか、悲しまないで下さいませ。
私も悲しゅうなりますゆえ・・
お約束を果たすことができず
本当に本当に申し訳ごさいませぬ。
・・・家)『・・康様・・』
はっと目を覚ました桜奈の目尻には
また、一筋の光るものが耳へとつたった。
ふと目をやると、ベッドサイドに
家康が座り、心配そうに桜奈を
見つめていた。
『あっ、ごめん起こした?これ持ってきた。
明日、泣き腫らした顔で行ったら
みんなが心配するだろうから・・
泣かせたのは俺だけど・・・ごめん。』
心配そうに蒸しタオルを差し出した。
(泣きながら、眠ってたんだ・・)
桜奈を深く傷つけてしまったことに
胸が痛む家康は、苦しそうな顔をする。
『ありがとうございます。』
桜奈にタオルを渡すと
『じゃ、おやすみ』と立ち上がった
家康。
咄嗟に、家康の着ていたシャツの端を掴み
『まって・・もう少し・・もう少しだけ
一緒に・・』いて下さいと言ったが
語尾は、消えいるような小さな声で
聞き取ることは出来なかった。
だが、家康は察して『うん・・』と言って
桜奈に背を向けたまま座り直した。