第22章 〜ただ一人の人〜
好きな人に怪我をさせたことをずっと悔いて
でも、憧れの好きな人だからこそ
小夏を支えて行くことを決め
まだ学生なのに、婚約したのだと思っていた。
実際に、パンケーキ屋で楽しげに
デートしているところも、見かけた。
自分が入り込む隙間なんて、最初からない
そう思っていたのに、一緒に過ごす時間を重ね
家康を知れば知るほど、想いは募った。
(小夏さんのこと好きだったんじゃないの?・・
そんなに、簡単に心変わりする人なの?
なんで、私を好きだなんて言ったの?)
絶望の後に、堰を切ったように溢れ出る疑問。
どんな気持ちで、何故私に・・・。
『運命の出会いなら良かった・・・か』
そう呟いた桜奈。
もし、もっと早く出会えていたなら・・・
もし、小夏さんが怪我をしなければ・・・
どんなに『もし・・・』に想いを巡らせた
ところで、現状は変わらない。
それどころか、そのあり得ない『もし・・』
がなかったからこその
出会いだったのかも知れない。
考えたところで、答えなど出ない。
分かるのは、一目見たあの瞬間に
お互い、どうしようもなく惹かれあったと言う
事実だけ。
(しぃちゃん言ってたっけ
恋はするものじゃなく、落ちるものだって・・
落ちたはいいけど、どうやって這い上がれば
いいのかな?全然、分かんないや・・・)
ふふっと、自分を笑う桜奈。
(なんか、疲れちゃった・・・
何も考えたく・・な・・い・・・)
自分を抱きしめるように、蹲ると
そのまま、泣き疲れ眠ってしまった。