第21章 また、恋してくれますか。
桜奈との待ち合わせ場所に
向かう電車の中で、家康は考えていた。
もし、小夏が光秀と幸せになれるなら
自分にとって、こんなにも嬉しいことはない。
この勢いで、今すぐ桜奈を抱きしめ
告白したいくらいだ。
けれど、光秀さんにそんなつもりがなかったなら
小夏はどうなる?また、深く傷つくことになりは
しないだろうか。
そうなった小夏を放っておけない。
それならば、桜奈に自分の気持ちを
伝えるわけにはいかない。でも・・・。
『はーっ』とため息をつく家康。
そうこうしているうちに、桜奈との
待ち合わせ場所に到着していた。
(考えても仕方ない。それに、どっちにしたって
俺は、引越しすることに変わりないし、一緒に
いられる時間も限られてる。大事に過ごそう)
そう思い直し、桜奈を待った。
少しして、桜奈が家康を見つけ
タッタッタと駆け寄ってきた。
『ごめんなさい、お待たせしました』
少し息を切らし、申し訳なさそうに自分を
見つめる桜奈に
『いいや、俺も今来たとこ。待ってないよ。
じゃ、行こうか』そういって、愛おしそうに
優しい笑みを浮かべた。
『はい』桜奈もまた、嬉しそうに
柔らかく微笑み返した。
並んで歩く二人。
手を繋いでいるわけでも、いちゃいちゃしている
訳でもないのに、二人が纏う空気は
穏やかな幸せに満ちていた。
二人でスーパーにより仲良く買い物し
重い荷物は、さりげなく家康が引き受け
他愛ない話を二人で楽しむ。
時々、家康に揶揄われ表情がくるくる
変わる桜奈をまた、愛おしそうに
見つめる家康。