第21章 また、恋してくれますか。
『ですよねー。桜奈もきっと
婚約者さんを裏切るような、徳永さんは
絶対に受け入れたりしないんですよ。
そこは、きっと何があっても譲らない
鋼みたいな芯を持ってる子だから・・・』
『ハッー』と、政宗と詩織は同時にため息を
ついた。
傍からみたら、これほど歯痒くて
不器用に見えてしまう
二人もいないだろう。
《無理が通れば、道理が引っ込む》
ようなことを、決してしようとしない二人。
それが正しい訳ではない。
無理を通し、傷つき、苦しんだ果てに
見えてくる幸せの形あるはず。
けれど、家康と桜奈は
それを望まないと言うだけのこと。
自分達が欲しいのは、そんな形の幸せではないと
お互い知っていて、示し合わせたように
自分を曲げなかった。
『俺らができることなんて、何もないよ。
せいぜい、見守って、話をしたい時に
聞いてやるくらいしかな・・・』
『そうですよね・・・』
しょんぼりする詩織の頭をぽんぽんと
撫で、励ます政宗。
『桜奈!家康のきな粉餅狙ってる
間に、こっちがなくなっちまうぞ!』と
桜奈の分のプリンを指差す政宗。
『だ、ダメです!それは私のお楽しみ
なんです!!』と、自分の席に急いで
戻った。
『もー、子供かよっ。桜奈のは
誰も食べないわよ。
桜奈のデザート横取りしたら
逆に、とって喰われそうだもの。
そんなのは、みんな知ってるよ!ねぇ。』と
呆れながら、クスッと笑う詩織。
家康と政宗をみると、うんうんと
無言で頷いてみせた。