第21章 また、恋してくれますか。
『?・・・しぃちゃん、暑いの?』
と桜奈に突っ込まれ、ギクッとしたが
『うん、焼肉の熱で、部屋暑くない?』と
慌てて、誤魔化す詩織。
『そうかな?』といいながら
テーブルの上を片付けていた桜奈を
政宗が手招きした。
『桜奈、ちょいこっち頼むわ』
『はーい』と政宗の元へ向かう桜奈。
『これは、桜奈が持ってけ。
自分で作ったもんだろ?』
と家康用に桜奈が作った
白玉のきな粉餅を指差した。
『あー、作ってはみたけど、自信ないなー』と
苦笑いしたが
『いいんだよ。上手い不味いの前に
食べて喜んでもらいたいって
気持ちが先だろ?
料理には、食べてもらう相手に
喜んでもらいたい気持ちが
隠し味として乗っかるもんだって
うちのお袋がいつも言ってる。
俺も愛ちゃんもそれを大事にして
料理に向き合ってるよ。
これにも、乗っかってんだろ?
桜奈のそう言う想い。』
と、優しくふっと笑う政宗。
『もちろん、山盛りで乗ってます!
味は、分かんないですけどね』と
桜奈もふわっと微笑み返した。
何やら楽しそうに微笑み合う
政宗と桜奈を横目にし
この先、自分ではない他の誰かに
あんな風に、楽しそうで、幸せそうな
桜奈の笑みが向けられて行くのかと想像
しただけで、やるせなさが込み上げてくる。
それが、胸を締め付ける痛みに変わっていく。
それは、桜奈への想いが消えない限り
受け入れ続けていかねばならない痛みでも
あるのだと思い知らされた。