第21章 また、恋してくれますか。
それでも、桜奈の想いに気づき
自然と込み上げてくる嬉しさ。
そして、同時に、その嬉しさを
掻き消すように
どうにもならない自分の立場。
今日ほど、それが恨めしいと
思ったこともなかった。
(桜奈が隠したい想いなら
気づかなかったことにしよう。
桜奈が俺を想ってくれたなんて・・
もう、それだけで充分だ・・・)
桜奈の意を汲んだ家康は淡々と
『へぇ、そんなに慕われてたなんて
知らなかったよ。まぁ、悪口じゃないなら
いいや。やっぱ、美味いね、焼肉にして
正解だったわ』と、一人何事もなかった様に
焼肉を食べた。
(ホッ、良かった、バレなかったよね?)と
思う桜奈とは、裏腹に
(あー、たぶん、気づかれた)と思う
政宗と詩織。
そして、更に突っ込む愛花の様子は
少しおかしくなっていった。
『えー、なんだ、違うのー!
最初は、政宗も桜奈ちゃん狙いかなと
思ってたけどさぁ、全然、ガツガツ行く
感じじゃないしー、あっそっか!
親友の彼女って分かったから
やめたんだーって思ってたのにー!ヒック・・
おっかしぃなー、私の感は当たるのに。
仕事ばーっかりしてて
恋愛センサー鈍ったかー?ふふっ・ヒック
そっか、お兄ちゃんねぇー、でも分かるよ!
私にもほら、こんな小生意気な、弟がいるもの。
ねー、政宗』と政宗をバンバンと叩く愛花。
『あ、愛ちゃん?もしかして酔ってんのか?』
と政宗が愛花の為に用意していた
ワインの瓶を持ち上げ、振ってみると
空になっていることに気づいた。