第21章 また、恋してくれますか。
だが、その笑顔が本心ではないと
家康には分かってしまった。
これまで、何度となく向けられてきた
見ている家康がなぜか、苦しくなる
辛さを隠した桜奈の笑顔。
そう、こんなふうに、無理な笑い方をする時は
桜奈が何かを必死に隠そうとする時。
(あぁ、もしかして、あの時も
そう言う事だったのか?)
桜奈の看病し、狸寝入りする
家康の髪に触れ無邪気な笑顔を見せていた。
だが、何をおもったか突然、切ない顔で微笑み
伸ばした手を握り締めて
引っ込めた桜奈。
その時の顔が今も焼きついていて
思い出すと、胸が締め付けられる。
何故、そんな顔するのかと、何度も思った。
思い返せば、あの時も、あの時も・・・
家康の中で、点と点が線で繋がる。
桜奈が隠している想いの正体が
はっきりと腑に落ちた。
(ハハハ・・・なんだ、俺らとっくに両想い
だったってこと?
必死になって隠すのは俺に
気づかれたくないから・・・?
当たり前か、婚約者のいる男を好きに
なったって辛いだけだもんな・・・
そうか、それなのに俺は自分の気持ちを
抑えきれなくて、思わせぶりな態度を
何回もしてたんだ・・・最低だ)
自分だけが、叶わない恋に
苦しんでいると思っていた。
だが、違った。
桜奈も同じ苦しさの中に
いるのだと、気がついた。
そして、あんな辛そうな笑顔を
させていた原因が
自分だったのだと。