第20章 〜それぞれの道〜
着替えながら、あらぬ妄想をする
詩織だったが、実際に何があったのかと
気になった。
そして、家康繋がりで、信長をふと
思い出していた。
(そう言えば、ジャケットをどうやって
返そう・・・。あの時は、また会える口実が
できた!って嬉しかったけど・・・
いやー、また会うのキツいなー)
そう思いながら、
(お礼は金平糖にするとして
病院に直接持っていく?
いやいや、仕事中はまずいよね。
患者でもない高校生が先生に何の用?
どんな関係?なんて思われたら
先生も迷惑だよねー。
あっ、私服でメイクしたら分かんないか・・?
でもねー・・・)とまた、考えは振り出しに戻る。
会うのを躊躇いながら
会うためのシミュレーションを
あれこれと、想像する詩織。
要するに、会いたかったのだ。
今は、ジャケットとを返すと言う
ただ、それだけで繋がっている細い糸。
返してしまえば、高校生の自分など
相手にはされず、その糸はぷつりと
切れてしまうことも分かっていた。
実際に、恋愛対象外だと言われて
振られたも同然の立場。
でも、それが信長の優しさから
出た態度だったことも、詩織は知ることができた。
そして、エア彼の信長より、実物の信長に
また、恋してしまったのだ。
(ジャケット返したら、もう会える理由も
なくなるしね・・・)
着替え終わり、ロッカーを閉めた時には
桜奈同様、疲れた顔になっていた。
(はっー、もうすぐ関係が切れてしまうって
分かってる中で、同居とか!私なら
肉食女子にでも、なんでも変貌しそう・・
桜奈もキツイだろうなぁ・・)と
大切な友達の心痛はいかばかりかと
胸が痛んだ。