第20章 〜それぞれの道〜
桜奈が出て行き、玄関のドアが
パタンと閉まると
家康はやっと息が吸えるような気分で
ため息をつき
桜奈もまた、自分にまとわり付く
熱波の中、やっとまともに息ができる気分に
なっていた。
(あっ、今日の夕飯どうしよう・・・)
結局、何も決めないまま
出かけてきた桜奈。
駅に向かいながら
(ああ、二人きりなんて、やっぱり私には
ハードル高すぎなんだよ・・・はっー
とか言いながら、あんな大胆なこと・・)
///かぁっー///
思い出すと、本当に自分が恥ずかしくなった。
恥ずかしくなりながら、けれど心の片隅で
キスして欲しかったと思う自分。
自分の唇にそっと触れ
さっきの出来事を思い出した。
頬に触れられ、目元を撫でられ
何より、吸い込まれてしまいそうな
翡翠色の瞳から、目が離せなかった。
うっとりし、思い出していたが
(じっと見つめられたら
何か、出会ったあの日の感覚になってたけど
あれって、目元についたまつ毛見てたんでしょ?
それなのに、それなのに、勝手に盛り上がって
私ってば、何を期待して・・あー、もー!!
恥ずかしくて、死ねるよー・・・
はっー、気まずい・・夕飯どうしよう・・)
時間が経ち、冷静になるほど増していく
羞恥心。
そして、一緒に増して行く気まずい気持ち。
桜奈はバイト先に到着した頃には
既に疲れきった表情になっていた。