第20章 〜それぞれの道〜
『じ、じゃ、私、バイトに行ってきますね』
と脱兎の如く、部屋へとピューッと
ダッシュする桜奈。
部屋の扉をバタンと閉めると
崩れ落ちるように、その場にへたりこんだ。
ドッドッド・・今にも口から飛び出して
しまいそうになる心臓を押し込むように
両手で口を塞ぐ桜奈。
(わ、私、なにしてた!
何を期待して、目を閉じようとした!!)
///かぁっー///
できるなら、今すぐ消えてしまいたい
恥ずかしさに、いたたまれなくなる桜奈。
一方、桜奈が風のようにその場から
居なくなった後、ストンとその場に
しゃがみこんだ家康。
ガックリ項垂れ、口元を手で覆ったまま
大きなため息をついた。
(///まじかーっ!はっー///)
自分の抑えが、ここまで効かなくなって
いるとは、自分でも思いもしなかった。
(あのままだったら、たぶん・・はっー)
動揺を隠しきれない二人は
この時、相手の行動の違和感を
見逃した。
本当は、キスをしようとした家康と
それを受け入れそうになった桜奈。
だが、お互いの目に映った相手の態度は
いきなり頬に触れ、驚かせたと
思った家康と
まつ毛をはらってくれただけなのに
キスされることを期待した桜奈。
″婚約者がいる“と言う障壁は
((絶対に、自分を好きにはならないだろう))
と言う思い込みとなっていた。