第20章 〜それぞれの道〜
ツンとしていた、桜奈だったが
突然、家康の顔が間近に迫った事に
目を見開き驚いた。
大きく見開いた桜奈の瞳に
吸い込まれそうになる家康。
桜奈もまた、美しい翡翠色の瞳に
真っ直ぐ見つめられ、息を飲む。
お互いの瞳に釘付けになった
二人の時間は、一瞬止まり
それから、ゆっくりと二人だけの世界に
移行して行く。
時間にすれば、ほんの数秒だった。
しかし何を思ったのか、家康の手がスッと
伸びてきて桜奈の頬に触れ
そのまま親指が目元を優しく撫でた。
そして、少しずつ迫って来るように見える
家康の顔。
流れに身を任せてしまう魔法にでもかかった
ように動けない桜奈。
何も考えられなかった。
家康以外の何も見えなかった。
受け入れてしまいたい本心を
止められなかった。
視線がゆくっくり下に向かい
目を閉じかけたその時
桜奈の頬を〝目を覚ませー!″と
引っ叩くように脳裏を駆け抜けた思考。
(ん?待って、今何時?///ってか、今
何しようとしてた、私ー!!)
桜奈の瞳の色が、焦りに
変わった事に気づいた家康も
Σハッと我に返り、動揺した。
(えっ?俺、今・・・な、なにを
しようとしてた!?えっーー)
桜奈の頬からパッと手を外し
自分の口元を覆った。
高揚し、高鳴っていた二人の鼓動は
焦りによって、ただの動悸へと変わって行く。
『//あっ、まま、まつげが目元についてて・・』
『//そそ、そうですか
あ、ありがとうございます』と
見えすいた言い訳と、見えすいたお礼を行って
その場を取り繕う二人。
いたたまれない空気の中で
お互いに冷静さを保つのに必死だった。