第20章 〜それぞれの道〜
意識すれば、途端に心臓は
全力疾走を始め、バクバクしてしまう。
そんな自分を悟られないように
『さっ、私もバイトいってきますね!』
と、また視線を合わせられないことを
誤魔化すように、くるッと身を
翻す桜奈。
(誤魔化すのが下手なのは
相変わらずだな・・)
ふっと笑うと、『今日、バイト何時まで?』
と家康は、桜奈に尋ねた。
えっと振り返る桜奈。
『えっと、今日は、5時までです。
あっ、夕飯、何かリクエストあれば作りますよ。
昨日のカレーもあるにはありますけど。』
『えっ?焼肉じゃないの?
だって、楽しむって焼肉のことなんでしょ?』
誤魔化しを暴くように、ニヤッとする家康。
『っ!!』
(全く、相変わらずの意地悪だ!)
『そ、そうでした・・・焼肉食べたいなぁ。
楽しみだなぁ・・ハハハ』
視線は、遠くにおきながら
もはや、どこの大根役者の台詞だと
思うほどの棒読みで答える桜奈。
(もう、お姉ちゃん変なこと言うから!
ぜっんぜん、誤魔化せないよー泣)
『ぷっ・・あっははは』と笑う家康。
『な、なんで笑うんですか!』
むぅっとしたものの、心の中では
(いや、そりゃ笑うよね、笑われるくらい
棒読みした自覚あるもん・・トホホ)
と思う桜奈だった。
『いや、だって、どこの大根役者かと・・
誤魔化すなら、誤魔化すで
もうちょっとヤル気出したら?
ふふ・・ふふふ』とお腹を抱える家康。