第20章 〜それぞれの道〜
この先の楽しみにワクワクしていた
はずなのに、桜奈は
ふと思ってしまった。
楽しいことを味わったその先に
今度は、せっかく出会った大切な人達との
別れが次々にやってくる。
そう思ってしまった瞬間、心の片隅で
特別な日々が終わって行くカウントダウンを
無意識にしてしまっていた。
(あー、家康さんとは来週にはお別れか・・
お姉ちゃんと過ごせるのも
たった3か月間だけ・・)
ネガティブな気持ちは、どんどん心に
広がって行く。
布団の端をぎゅっと握りしめ
もう二度と会えない、と言うワードと
別れの『その日』を迎える不安が
桜奈の心に重くのしかかってきた。
底知れぬ寂しさに、飲まれそうなる自分。
飲まれないよう、ぐっと踏み止まると
(家康さんも、お姉ちゃんも幸せになる為の
道を進んで行くんだから、幸せを祈って
笑顔で見送らなきゃ・・・)
そう考え直し、自分の寂しさを宥めた。
自分も自分の幸せになる道をちゃんと
探そう。
だから、今は今の時間を大事に過ごそう。
そう、自分を鼓舞し寂しさを振り払うと
いつの間にか眠りに落ちていた。
次の日から、大祭に向けて上杉家も
朝からバタバタとしていた。
この次期になると、大祭の準備の為に
千里は泊まり込みで手伝いに行く。
去年までは、桜奈も一緒に
泊まり込んでいた。
しかし、今年は家康もいるし、バイトの
シフトの都合もあり、栞も手伝いに行く為
舞の練習だけで、大丈夫と言うことになった。
その為に、家康と桜奈は
少し遅れて向かうことになった。