第20章 〜それぞれの道〜
『そっか、それはしんどいね。
それでさっき、一生独身かも・・って
お風呂の中で呟いてたのね』
Σなんで、それを!っと言う驚いた顔で
栞を見る桜奈。
『もしかして、聞こえてたの?』と言う桜奈に
コクッと頷き
『ごめんね、聞こえちゃった。
びっくりして歯磨きの泡、飲み込むとこだった』
とクスッとした。
『片想いだけでも悶々とするのに
可能性のない片想いは更に辛いわね。
そうか、家康君には決まった人
いるのか・・若いのに、責任感の強い
誠実で、優しい子なんだね。
そんな家康君を、好きになったってことは
桜奈の男を見る目は確かってことじゃない!
軽はずみなことは言えない。
好きな人を諦めろとも
忘れなさいともね。
未だに一人の女性に
執着してる、おじさんを目の当たりに
してるしね、誰かはわかるでしょ?』
と、舌を出し、戯ける栞。
『でもね、真っ直ぐなのよ!
ほんとに、不器用なくらい真っ直ぐ
想ってる。そんな風に愛される
桜奈さんが
羨ましいと思うほどね。
でも、きっと桜奈さんも
同じだと思う。
そんな生き方を誰にも否定なんて
できないでしょ?』
コクッと頷く桜奈。
『だからね、決めなくていいと思う。
気持ちのままに、生きていていいと思う。
家康君より好きな人に会えても
会えなくても結婚しても、しなくても
桜奈の気持ちの気が済むまで
想ってても、想いが消えていったとしても
桜奈の気持ちを否定したり
咎めるのは、たぶん桜奈しか
いない。自分さえそれをしなければ
心は自由でいられるよ?
そう、そう、それに利休さんも言ってたよ。
小さな出会いを大切に育てていくことで
人生の中での大きな出会いに
なることもありますよって』