第20章 〜それぞれの道〜
両想いなら何の問題もないはず。
例え、お互いの気持ちには
気づいておらず、片想いだと
思いこんでいたとしても
それだけでは、涙のわけとして
説明がつかない。
自分のいい方が悪かったのか?
知らないかったとは言え、茶化した
せいだろうか?色々と原因に
思いを巡らせるものの
栞には桜奈が
涙を流すわけに見当がつかなかった。
そして、不意に思い出した、お風呂場での
桜奈の独り言。
宥めるように、でも真面目な顔で
桜奈に語りかけた。
『ねぇ、桜奈。昨日今日、突然やってきた
お姉ちゃんに、話すのは嫌かも知れないけど
もし、何か苦しい思いをしてるなら
吐き出してみない?力になってあげられる
ことは何もないかもしれないけど
話を聞くだけなら、お姉ちゃんにもできるよ。
私にお姉ちゃんらしいことをさせて
花を持たせてあげようかなぁー、なんて
思ってはくれない?・・・か。
ハハ・・・ごめん、ごめん。
無理に言わなくていいよ。
きっと、触れて欲しくない部分に
無神経に触れたんだよね。ほんとごめん』
そう言って、拝むように謝る栞に
涙をぬぐいながら、ふるふると首を横に振る
桜奈。
『違うの。私の方こそ突然泣き出して
ごめんなさい。びっくりするよね。
・・・お姉ちゃんが思ってる通りだよ。
私、家康さんとの出会いに勝手に運命感じて
気づいたら、好きになってた・・
でも、それは、やっぱり私の勝手な片想いで
運命どころか、好きになっちゃダメな人だって
後から知ったんだ・・』
ぐすん、ぐすんと鼻をすすり
涙を拭いながら
ポツポツと答える桜奈。