第20章 〜それぞれの道〜
栞が部屋に戻ると、桜奈はベッドの上で
うつ伏せになり、足を揺らしながら
徳川家康の本を読んでいた。
『桜奈、何読んでるの。』
『あっ、お姉ちゃん!話終わったの?
あっ、これ?これはねー
もちろん、愛して止まない徳川家康の本よ!』
嬉しそうに、ニコニコしながら答えた。
『本当に好きなんだねぇ』と、感心を超え
やや、呆れる栞。
そんな空気など、ものともしない桜奈は
褒め言葉のように受け取り
『うん、お姉ちゃんの話を聞いて
もうね、もっーと好きになった』と
無邪気に答えた。
それから
『お姉ちゃんは?パパに帰る方法の
話は聞けたの?部屋に戻るとき
ママから相談に行ってるって聞いたから。
どうだった?』と少し心配そうな顔を見せた。
『うん、聞けた。次にワームホールが
開くのは、たぶん桜奈の
お誕生日の日だって。そんな大事な日にかい!
ってちょっと思ったけどね』
(でも、お誕生日祝ってあげられるなら
嬉しいよ!)
『えっ?』と驚く桜奈。
『私の誕生日が、お別れの日になるの?』
(そんなに、早いの?てっきりもっと先の
話かと思ってたのに・・そんな、せっかく
会えたのに・・・3ヶ月くらいしか
ないじゃない。)
みるみるガッカリした顔になり
落ち込んでいく桜奈。
栞も桜奈の傍らに腰掛け
残念そうな顔で桜奈の頭を撫でると
『うん、私も妹にせっかく会えたから
もっとゆっくりしたいところだけど
やっぱり、向こうの家族が心配でね。
特に凛桜を不安にさせてると思うと
気がきじゃなくてね・・』と答えた。