第20章 〜それぞれの道〜
コンコンと鷹介の書斎のドアをノックすると
『はい、どうぞ』と鷹介。
お茶を持って入っていくと
『栞か、あっ、ありがとう。
お茶持ってきてくれたんだ』
『うん、あとちょっと相談があってね・・』
『相談?パパで乗れる相談なら、いつでも
のるよ』と優しい笑みを浮かべ
差し出されたお茶を受け取った。
ソファに座るよう促され
腰掛けた栞は
『ママから、話は聞いてる?』と尋ねた。
『うん、だいたいのことは聞いてる。
僕もいつの間にか、おじいちゃんなんだって?
驚いたけど、栞も37歳だもんなぁ・・
なんだか、いつまで経っても僕には
小さい頃に、パパ抱っこー!って言ってた頃の
気持ちのままなんだけどな・・』
懐かしむように、柔らかな笑みを浮かべ
栞を見つめる鷹介。
『あっ、分かる。その感覚。
私も、凛桜のことはいつまで経っても
そんな感覚で見ちゃう時がある。
でもね、パパ。私もいい歳だから。
現代で言うところの、立派なおばちゃんよ。
気持ちは、20代だけどね』とドヤ顔を
した。
『ハハハ、栞がおばちゃんなら確かに
僕はおじいちゃんの域だな。凛桜ちゃんか・・
会ってみたかったな・・・』栞の幼い頃と
重ねるようにまだみぬ、孫に思いを馳せた。
(本当に、残念だ・・)
『うん、私も会わせてあげたかった・・』
(ごめんね、パパ・・・)
孫にも会わせてやれない所へ
嫁いでしまったことに、チクリと胸が痛んだが
『いいんだよ、パパもママま栞が幸せなら
それ以上に、嬉しいことなんてないんだから』と
千里と同じことを言って、栞の抱える罪悪感を
また和らげてくれる。