第20章 〜それぞれの道〜
それならと栞は、また静かに語り始めた。
家康と桜奈が許嫁になった経緯。
その後、桜奈の身に起こった悲劇。
感情も記憶も失いながら、雪姫とまで
言われ心が凍っていた時期。
それでも惹かれあって結ばれてた二人。
けれど幸せは長くは続かず、我が子を病で失い
子供を望めない身体になった桜奈
の苦渋の決断。
栞は、二人が惹かれあって困難を乗り越え
愛し合い、労り合う姿を間近で見てきた。
だからこそ、幸せになって欲しかったのに
三十歳の若さで逝ってしまった
栞にとっての最愛の友。
涙ながらに語る栞に、もらい泣きするように
千里も桜奈も涙ぐんだ。
最愛の妻を失った家康を支えているのは
この現代へと続く泰平の世を作ること。
次に生まれるときは、栞の生まれた時代に
生まれ変わりたいと願った桜奈の
望みが叶うよう、そして生まれ変わった桜奈に
胸を張って会いたいからと
ただ、その一心で今も頑張っている家康。
『だからね、今でも、家康の心の中にいる
唯、一人のひとが桜奈さんなの。
何人側室がいようと、子供がいようとね。
全部、桜奈さんとの約束を果たす為。
時々、見てるこちらが痛々しくなるくらい
必死で決してブレない人よ。
徳川家康はそう言う人。桜奈さんを
愛してやまない誠実な人だよ』
と桜奈に語りかける栞。
桜奈は、頷きながらも
既に感極まり拭っても、拭っても
涙が溢れた。
何故かは分からない、分からないけれど
もう一度、桜奈に会いたい一心で
頑張っている徳川家康を想像すると
ただただ胸が締め付けられ、熱い想いが
こみ上げ涙が溢れて来る。