第20章 〜それぞれの道〜
桜奈の落胆ぶりに焦りつつ
誤解はあるものの、よく知っていると
感じた栞。
(しまったわ、軽口で家康のイメージ
傷つけるどころか、どんどんイメージが
悪くなっていってるし・・
なんとか、誤解は解かないと)
すっーと、息を吸い込むと、静かな声で
『ごめんね、誤解させる言い方したね。
あのね、家康は、不誠実でも
自分勝手な人でも絶対ないよ。
そこだけは、徳川家康の名誉の為に
分かって欲しいな』と、ピシッっと
言い切った。
栞に、自覚はなかっただろうが
そこには織田信長の妻に相応しい
威厳が漂っていた。
いつの間にか、染みついた
安土城の女主人としての威厳。
いつも、柔和な栞からは想像もできない
ピンッと張り詰める空気感に
なったことに驚く面々。
一斉に栞を見て、息を飲んだ。
栞は、家康の誤解を解こうと
家康と桜奈の苦渋の決断を
静かに話始めた。
『家康はね、側室なんて要らないって
桜奈さんだけ、側にいてくれたら
他に何も要らないって言ってたの。
それくらい桜奈さんを心から愛してた。
それは、今もずっと変わってない。』
真っ直ぐ桜奈を見つめ
そう言った・・・だが桜奈は
『でも、歴史だと側室20人以上で
11男5女の子供になってるよ?
奥さんだけを、思ってたのなら
なんで、そんなに側室をもつ必要があったの?
矛盾してるよ』と一度、感じてしまった
不信を拭うことはできず、食い下がった。
(そうだ、そう言えば私は奥さんがどんな
気持ちで側室受け入れたか
知りたかったんだった・・)