第19章 〜祈り〜
退院してきたばかりなのだらかと
少し休むよう促された栞。
千里がお布団を敷いている間に
栞は、17年振りの我が家を眺めた。
何も変わっていなかった。
変わらないまま『お帰りなさい』
そう言われているような気がしてくる。
目に止まる、ひとつひとつの物が
思い出の引き出しであるかのように
両親とともに過ごした日々が蘇ってくる。
両親が自分をどれほど想い続けてきて
くれたのか。
自分がどれほど愛されていたのか。
今なら、痛いほどわかる。
(出会いが決まっていたとしても
あの時代に残ると決めたのは私。
でも、凛桜と二度と会えなくなるかも
知れないことが、こんなに苦しいなんて・・・
ママにこんな思いをさせてしまってたなんて・・
ごめんなさいパパ、ママ・・・)
心でそっと詫びながら、また涙が流れた。
(ありがとう、私はずっと守られ
愛されて、幸せの中に居たんだね・・
こっちでも、あっちでも・・・)
そして自分に注がれ与えられていた
たくさんの温かい想いに気づく。
心が温かいもので満たされ、感謝の気持ちが
溢れてくる。
自分が時を超えて、戦国時代にいると
分かり、戻る術がないと知った時
何故、自分がこんな目に遭わなければ
ならないと、運命を呪った日もあった。
それですら、自分が愛されていたことに
気づく為のものだったなら、必要だっのかも・・
そう思えてしまう自分もいた。
(目に焼き付けておこう!あっちの時代に
もし帰れたら・・・ううん、必ず帰る。
そうしたら、もうここには戻っては
来れないもんね・・・)
そう言って、また家の中を眺めた。