第19章 〜祈り〜
次の日、無事に退院してきた栞は
17年ぶりの我が家の匂いを
玄関先で吸い込んでいた。
『あー、懐かしい匂い。うちの匂いだ』
『もう、変な子ねー』とクスクス笑う千里は
『お帰りなさい栞』と栞の肩を抱き寄せた。
『うん、ただいま、ママ』と言って
ほっとしたような笑みを浮かべる栞。
『さっ、少しゆっくりしてて
明日から、週末にかけては大祭の
準備でバタバタするしね。
おじいちゃんもおばあちゃんも
会いたがってたから、暫く
ゆっくりはできなくなるわよ!』
『そっか、そんな時期なんだねー
懐かしいなー、おじいちゃんや
おばあちゃんにも凄く、心配かけちゃったよね』
と申し訳なさそうにする栞。
『気に病むことは、ないわよ。
貴方が居なくなって、おじいちゃん達に
全て話をしたわ。おじいちゃん達も私も
鷹介さんも、例え、二度と会えなくても
栞が元気で幸せにならそれで十分だね
って、みんなでそう話をしたの。
でも、まさかまた、元気な姿を見れるなんて
思ってなかったから、本当に嬉しい・・』と
涙ぐむ千里に
『うん、ずっと元気で、ずっと幸せだったよ。
わがまま言って、あっちの世界に残ったことを
悔やんだ事なんて、一度もない。
本当に幸せだった。
結婚して、娘も授かって、ちなみに名前は
凛とした桜で凛桜ね。もう15歳になる。
会わせてあげられなくて残念だけど・・・』
(今頃、どうしてるかな、凛桜。
後悔しても遅いけど、ごめんね凛桜。
ごめんなさい、信長様。
でも、なんとしてでも帰るから待っててね・・)