第19章 〜祈り〜
信長との別れ際、詩織はスッキリした
気持ちでいた。
自分が信長に抱いていた感情が
ただの憧れで、恋とは違ったと
自覚できたからだ。
これまでのモヤモヤした気持ちが
晴れたようで清々しい気持ちになり
自分の思ったこと事を素直に口にできた。
自分の7年の拗れは、解消され
終わったはずだった。
なのに、今また別の感情が芽生えて
しまっている。
(やだなー、私、気づいてしまったかも
知れない・・・今のこの気持ちって
間違いなく、アレだよね・・・
終わったと思ったのに、始まってるじゃない
ガッツリ、知らぬ間に落ちちゃってたんだ・・
しかも、さっきまで妙に浮かれまくってた・・・
どうしよう・・・先生には、恋愛対象外宣告
受けてるのに・・・
今度は、本当の片想いかよ!
せっかく、綺麗さっぱり終わったと
思ってたのに・・・どうすんのよ、この気持ち)
知らぬ間に、勝手に恋に落ちていたと
自覚した詩織は、自分の恋心に
不服申し立てをして、抗議した。
ジャケットを抱きしめるように
横向きになり蹲り、『はーっ』と
ため息をついたが、自分が後生大事に
ジャケットを抱きしめている事に
気づき、ジャケットを自分から引き剥がし
眺めながら、また『はーっ』と
ため息をついた。
さっきまで、ジャケットを返す為に
また会えると嬉しかった気持ちは
どこか憂鬱な気分に浸食され始める。
(脈なしの相手に、片想いしたってねー)
結局、詩織の片想いは
本物の恋に落ちてしまったことで
双六ゲームでよくある
『振り出しに戻る・・』
状態になってしまったのだった。