第19章 〜祈り〜
信長の人間性に改めて気づいた詩織。
さっきまで、自分が惨めだと思っていたのに
今度は、惨めだと思っていた自分が
愚かしく思えた。
(何も見ようとも、分かろうともしないで
自分の気持ちばっかり、押しつけて見てた
たんだ、私は・・・)
自分の愚かさに肩を落としながらも
上辺ではなくその奥にある、本来の信長の姿が
一瞬でも見えた気がして、触れられた気がして
嬉しくもなっていた。
(なんだ・・私が憧れた人は、やっぱり
優しくて、さり気なく気遣いできる
カッコいい人だったんだじゃない・・・
片想いの相手として間違ってなかった・・・)
そう思えてきて、胸がキュンとし喜びと共に
胸の奥からじわっーと温かさが広がって行く。
『どうした?そろそろ家の近くじゃないのか?』
信長にそう言われハッとし
パッと外に目をやると信長の言う通り
詩織の自宅前近くまで来ていた。
『あっ、うち、あそこです』と指さした。
信長との再会直後から抱えていた
迷いが消え、詩織の中で信長への
気持ちに一つの決着がついた。
車から降りる間際、晴れ晴れした顔で信長に
『送ってもらってありがとうございました。
先生は、ヒーロー設定だって言ってましたけど
違いますよ。先生はやっぱり私にとっては
命の恩人で、ヒーローです。
失礼な態度ばっかりとって、すみませんでした。
今日、また会えて本当に良かったと思ってます。
私の中の誤解を解くことができたんで!
ありがとうございました。』
そう言って、ペコっと頭を下げると
迷いのない、清々しいほどの
満面の笑みでふわっと笑う詩織。
ドキっとさせられたのは
今度は信長の方だった。
(まいったな・・・//)